名 称 「まごはやさしいメニュー」での高齢者健康講座
開催場所 別府大学食物栄養科学部食物栄養学科
実施責任者 平川 史子

 

−報  告−

 

経 緯

2008年版「高齢社会白書」では、高齢者数2746万人、比率21.5%ともに過去最高を更新した。少子高齢化の中で、活力ある高齢者がいつまでも元気で健康な生活を送ることを支援するために健康講座を企画した。地域住民(高齢者)を対象とし、生活・食習慣等を聞き取り、血管年齢を測定することで、まずは自分の健康状態を確かめてもらう。さらに血管疾患を予防する効果のある身近な食材を活用した美味しい献立の調理実習を行う。調理実習により日常の食生活における「血管疾患予防のための食事」の重要性を理解してもらうことを目的として実施した。

 

実 施

(1)対象者
対象者の募集は別府市報、ホームページで行い、また過去の講座参加者にも連絡した。その結果、基礎調査に15名、調理実習に25名の申し込みがあった。

(2)基礎調査
平成20年8月1日(金)、2日(土)に基礎調査を実施した。
内容は次のとおりである。

対象者ひとりひとりに学生2名配属しアンケートの記入方法の説明や提出された食事内容の確認を丁寧に行なった。

入り口
アンケート記入
体脂肪率測定
血管年齢測定

 

(3)動脈硬化性疾患の予防のための栄養指導、調理実習
平成20年9月27日(土)に講義と調理実習を行なった。まず、基礎調査時に提出してもらった3日間分の食事メニューから1日の習慣的な栄養素等摂取量を計算しそれを基に個人に対して栄養コメントを作成し栄養指導を行なった。
次に、今回のテーマである「飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸」についての講義を行い、脂肪酸の種類や働き、多く含まれている食品などを説明した。メニューは不飽和脂肪酸が多く含まれるいわしやマグロなどを取り入れ、また薄味でもおいしくいただけるような内容にした。対象者を6班に分け、それぞれ学生を1名ずつ配置し、調理実習を行なった。
さらに、試食会には大学の教員も加わり、食や健康に関する身近な話題などを提供しながら地元住民の方々との交流をはかった。


 

終わりに

現代の日本人の死因の2/3を占める血管疾患は、食事・運動習慣の影響が大きいといわれている。その予防にはまず血管の状態を把握し、食事・運動の習慣を改善させることが重要である。高齢者白書では、働く意欲が旺盛な高齢者自らが、人口減の中で活力ある社会維持に果たす役割の大きさを指摘し、多様な就労形態を整えることの重要性も訴えている。高齢化率が2055年に40.5%に達し、現役世代1.3人で高齢者1人を支えることになり、平均寿命もさらに延びると予想した上で、「65歳以降の人生が長期化する」と強調している。また、65歳から69歳の就職していない人のうち、男性は4割以上、女性は2割以上が就労を希望しているとも報告されている。このことより、働く意欲のある高齢者に対して「健康に生きていく」ためのサポート体制を整えることが地域にある大学としての役割でもあると考えられる。

別府大学食物栄養学科では地域住民の方々(高齢者)との交流を深めるために、毎年地域住民公開講座を開催しており、今回で10回目を迎える。昨年より調理実習の他に基礎調査として身体測定と血管年齢の測定を実施している。参加者は2~3回目とリピーターが多く、毎年この講座を楽しみにしている。

 

受講者の感想としては

など自分の体や健康に関して前向きな感想が多かった。
今後も別府大学では、生涯学習等の社会的要請に応えるため、地域住民(高齢者)の方々と高齢者社会をこれから支えていく大学生(孫世代)と交流を深め、協力しあえる関係を築くことで、双方の世代に対して「食」への関心が高めていきたいと考えている。


報 告

今回の講座の内容を基に日本食糧新聞に記事が掲載された。

 

参 考

調理実習メニュー
とろろまぐろ丼
魚すり身の水餃子
さつまいもと豆の胡麻酢和え
豆乳くず餅
果物(梨・ぶどう)

 

栄養価(1人分)

エネルギー (kcal) 765
たんぱく質 (g) 36.6
脂質 (g) 10.8
飽和脂肪酸 (g) 2.04
一価不飽和脂肪酸 (g) 2.45
多価不飽和脂肪酸 (g) 4.25
n-3系脂肪酸 (g) 0.86
n-6系脂肪酸 (g) 3.34
カルシウム (mg) 223
食塩 (g) 3.3

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