シニア食育講座実施報告書

1.概要

(1)事業名称:シニア食育講座

 

 

(2)目的

高齢化社会を迎え、シニア世代の健康長寿のためには、健全な食生活を営むことが大切である。しかるに、現在、栄養バランスの偏り、低栄養、孤食化など様々な課題が生じている。

「食」は社会の縮図であり、これらの課題に対しては、シニア本人と家族、地域社会、食に係わる企業や団体が連携して取り組む必要がある。

このため、シニア世代の人々やこれに影響力を持つ関係者を対象とし、食に関する多面的な知識・手法を、様々な分野の専門家がわかりやすく紹介する市民講座を開催し、食に携わる人々はもとより一般市民の啓発をおこなう。

 

(3)開催日時・場所

南青山会館本館3・4号会議室 東京都港区南青山5-7-10

第1回:平成25年10月30日13時30分~17時

第2回:平成25年12月 4日     同 上

 

 

(4)参加者

人 数:第1回41人 第2回44人

対象者:食に関心を持つシニア世代の人々やこれに影響力を持つ食品企業・団体の広報・商品開発・品質管理等の関係者、食育関連団体関係者

年齢層:概ね40代~60代

 

 

(5)講師

① 第1回
(講師紹介はこちらから 第1回 第2回)
星 旦二  首都大学東京大学院都市環境科学研究科教授
高田 和子 国立健康・栄養研究所栄養ケア・マネジメント研究室長

 

② 第2回

石川 祐子 (独)農研機構食品総合研究所機能性成分解析ユニット長
森永 康  日本大学生物資源科学部食品生命学科教授

 

(6)実施責任者

公益財団法人すこやか食生活協会専務理事 門間 裕

 

2.講演の概要

(1)第1回講演

 

① シニア世代の生きる意欲と健康寿命
講演者:
星 旦二
首都大学東京大学院都市環境科学研究科教授
講演概要

 

健康長寿は、本人や家族の生活の豊かさだけでなく、国の医療制度や社会保障の観点からも大きな意味を持っている。身体的・社会的・精神的要因のいずれもが健康維持に重要であり、地域の住みやすさ、咀嚼力と生きがいの保持、ある程度の収入と社会参加が健康寿命の維持・延長に大きく作用している。

 

② 高齢者の低栄養リスクの背景とその対応
講演者:
高田 和子
国立健康・栄養研究所栄養ケア・マネジメント研究室長
講演概要

 

健康寿命を伸ばすには、生活習慣病の予防だけでなく、身体機能や生活機能の低下にあわせた食生活の注意が必要である。加齢に伴い、疾病構造や身体の変化がある。また、それにあわせて食事内容も変化するが、栄養問題は過剰摂取と摂取不足による低栄養の両方がある。身体機能の低下に伴い、食べ物の調達・準備の整備も必要である。

(2)第2回講演


① 農産物・食品の機能性研究の現状と今後の方向
講演者:
石川 祐子
(独)農研機構食品総合研究所機能性成分解析ユニット長
講演概要

 

食品には栄養機能、感覚・嗜好機能に加え生体調節機能がある。食品の機能を理解し、健康に役立てることが重要である。農産物・食品には、生活習慣病をはじめとする酸化ストレスに由来する様々な疾患やアレルギーの予防等に役立つ成分が含まれている。機能性の評価は、期待する効果の明確化、評価する方法の選択及びエビデンスの明示が必要である。そこで、抗酸化能評価法の開発とその利用、抗アレルギー活性評価法などの実用化に向け研究・開発を進めている。

 

② 微生物を利用した機能性食品の開発
講演者:
森永 康
日本大学生物資源科学部食品生命学科教授
講演概要

食品の機能性発現に微生物はどう役立つかという観点で特定保健用食品をはじめとする機能性食品や機能性素材の製造における微生物利用の現状を概観する。新しい機能性微生物の開発、新しい機能性食品・素材の開発、既存の機能性食品・素材の効率的生産により機能性食品が開発されており、今後、さらに研究開発が進むものと考えている。

 

3.受講者の声

このようなセミナーが無料で実施されるというのはとてもありがたい。
内容が高度であり、非常に優れたセミナーなのにどうして参加者が少ないのか。
次回には、もっと知り合いを連れてきたい。
星教授の「行き付けの歯医者を持て」「やりたいことを持つ」との話は、具体的で納得できる。
高田先生が離された「平均寿命と健康寿命の差を縮めるためには、食生活環境が重要となる」とのことは、自分の居住地域で考えると、どのように地域として取り組めるのか、自分達自身の課題が多いと感じている。
石川先生「抗酸化能評価法の利用、抗アレルギー活性評価法の実用化に向けた研究・開発」については、食品業界としてすでに状況を一部聞いている。商品開発のために実用化を急いでほしい。
森永教授の行われてきた商品開発の概観がよく分かった。企業での対応と大学での取り組みとどのように異なるかも知りたかった。もう少し時間があると良かった。