公益社団法人日本フードスペシャリスト協会

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フードスペシャリストに聞く

活躍するフードスペシャリトに聞く(日本食糧新聞掲載のインタビュー記事より)

消費者に近い立場 商品の動きを数字で把握

株式会社白子・東京支店営業課 
左澤 珠美さん(日本大学生物資源科学部食品ビジネス学科卒業)

左澤 珠美さん

株式会社白子で営業職に就く左澤珠美さんは、もともと食に対する興味が強く、TVの料理番組を見るのが大好きで、大学を選ぶ際に、フードスペシャリストの資格を取得できる、日本大学生物資源科学部を選んだ。食品の栄養からおいしさ、調理、盛り付けまでも含め、全体的に学べることに魅力を感じてのことだ。

入社後、スーパーやCVS、ドラッグストアなどの小売業に営業活動をする中で、大学時代に学んだ調理からフードコーディネート論などの知識を活用、四季折々の提案を行っている。商品説明一つとっても、見た目やにおい、食感など感応評価に基づき、より的確な表現方法でできることも知識のたまものと感謝。商品が「生協宅配で採用され、消費者が欲しい情報を意識して作ったキャッチコピーや文章が、紙面に反映されたこと」が一番うれしかったという。

一方、自社商品の海苔は地味ではあるが身近な存在でもある。乾物類は保存性があり、栄養が豊富だが、調理に手がかかる点で敬遠される側面もある。だが海苔は、そのままおにぎりやもちなどに巻いて食べるなど即食性も兼ね備えており、利点を訴求していかなくてはならない。特に若い人にもっと食べてもらえるには、見た目が大切で、印象の残る商品パッケージや裏面表示に工夫することはもとより、インスタなどSNSを活用した情報発信も欠かせない。

人との会話や、仕事の成果がすぐ分かる今の仕事に魅力を感じる左澤さん。「営業職の良さは、消費者に近い立場で生の声が聞けることと、商品の動きを数字ですぐに把握できること」と話し、こうした情報を生かした提案活動を進(深)化させるととともに、開発スタッフとも連携を図っていきたいとする。


特別な時間を提供 期待を超える接遇目指す

株式会社すかいらーくレストランツ「夢庵」神奈川営業部
遠藤 初夏さん(十文字学園女子大学人間生活学部食物栄養学科卒業)

遠藤 初夏さん

食の仕事を志したきっかけは小学生の時、初めて焼いたクッキーをバレンタインで友達に配ったこと。作る楽しみに加え、うれしかったのは「おいしい」という声だった。

「料理の提供はもちろん、実際にお客さまの反応にも触れられることがやりがいです」と話してくれたのは、すかいらーくレストランツ「夢庵」神奈川営業部の遠藤初夏さん。和食レストランで接客から調理、発注管理までさまざまな業務をこなすフードスペシャリストだ。

栄養士、管理栄養士の資格も持つ遠藤さんは「栄養士は栄養の側面に特化して学びますが、フードスペシャリストは食について幅広く学べ、食事の楽しさやおもてなしなども知れるのが魅力的に感じました」と振り返る。

フードコーディネート論の実習では、テーブルに配置する食器や装飾の素材、色合いで食事の印象が変わることを体感した。まさに和食レストランの仕事に直結している。食の安全・安心や衛生管理、サービス、食の歴史などの知識はすべて役立っているという。

「お客さまには家とは違う特別な時間を過ごしてもらいたい。思っていた以上のサービスが受けられたと思っていただけるよう、おいしい料理に加え、従業員みんなで力を合わせてお客さまの期待を超えるお店作りをしていきたいです」と思いを語る。あるメニューを豆板醤抜きで注文する常連客が来店した時のこと。注文時にその指定がなかったことに気付いた遠藤さんは、接客を担当した従業員に確認を依頼。その指示は的確で、常連客から「すごくうれしい、ありがとう」と言われたことがとても印象に残っているという。まさに遠藤さんの仕事への思いを象徴しているエピソードだ。


食品・日用品を配達 商品やレシピの提案も

生活協同組合パルシステム神奈川パルシステム事業部麻生センター供給担当
髙橋 美優さん(日本大学生物資源科学部食品ビジネス学科卒業)

髙橋 美優さん

生活協同組合パルシステム神奈川の麻生センターに所属している髙橋美優さんは、日々1・5t車を運転して生協の組合員に食品や日用品を届けている。コロナ禍で外出を控えたい、身体的な負担がある、など老若男女問わずさまざまな理由で利用がある。

将来は食に関わる仕事で人の役に立ちたいと考えていたところ、食について幅広く学べるフードスペシャリストの資格を知り、養成カリキュラムがある日本大学生物資源科学部食品ビジネス学科に進んだ。食品の官能評価の授業で醤油や油、豆腐などの食べ比べをしたことは新鮮だった。「同じ食品でこんなにも味が違うのかと。食への関心がさらに高まりました」と振り返る。研究室で専門に勉強していたフードコーディネート論も資格取得の必修科目になっており、その学ぶ領域の広さをあらためて感じた。髙橋さんは4年次で試験に合格、フードスペシャリストになった。

パルシステムに入協した理由は、素材の味や自然のおいしさが生かされた商品を多くの人に届けられるから。パルシステムの商品はなるべく農薬に頼らず、化学調味料が入っていないのが特徴だ。資格取得で得られた幅広い知識のおかげで配達商品が生産者、消費する組合員双方の目線でこだわって作られていることにより気付き、やりがいを感じている。毎週配達で会う組合員一人一人に合った商品やレシピを提案する際にも役立っている。

将来的には組合員に長く愛される商品の開発に取り組んでみたいという。また、現代の食生活を考察した上で「食品添加物とうまく付き合いながら、味覚が育成される子ども世代に『本物の味』をどう伝えていけるか考えていきたいです」と熱い思いを語ってくれた


営業職にやりがい 多くの食シーンに関わりたい

丸大食品株式会社東日本営業部首都圏第一営業課
難波 美月さん(相模女子大学栄養科学部健康栄養学科卒業)

難波 美月さん

難波美月さんは、幼いころから食べることが好きで、特に大人が料理している姿を見るのが大好きだった。将来は食品に関わる仕事をしたい。中でも食に関して総合・体系的な知識を身に着けるフードスペシャリストに魅力を感じ、資格取得できる相模女子大学栄養科学部に入学した。

現在は丸大食品の営業職として、毎日の食卓に登場する商品を小売業に紹介している。学生時代は、栄養学から食文化や行事食まで幅広く学び、社会人になって「その知識が体の中にたたき込まれていることが分かった」とする。

というのは、食品は栄養成分だけでなく、おいしく楽しく食べるための調理や食べ方、食シーンも欠かせない。そこに着目し、節分の前なら、魚肉ソーセージで恵方巻きといった、季節や行事をからめた提案をする。これが事前に準備しなくても、すっと自然と出てくる時に「学生時代に学んだことが生かせている」と実感する。

 元来「人好き」な難波さん。フードスペシャリストの仕事として保育園や病院で働く選択肢もあったが、人との会話が仕事の営業職を志望した。入社後「会社の上司や得意先の小売業の方、もっと言えば売場からも、多くのことを教えてもらっている」。

だが入社はコロナ禍の20年4月。対面や試食販売ができないため、「試食を提供すると、商品の魅力がすぐに伝わるのに」とジレンマを感じる日々だ。

それだけに悩んで、電子POPなど販促物を用意し必死にPRする。その努力がかなって採用され、お客さんが商品をかごに入れる姿を見るのが何よりうれしく、やりがいを感じるという。「メーカー営業として、一人でも多くの食シーンに関わりたい」と願う。


工場で商品開発 資格生かした弁当作り

株式会社ドリームファクトリー総菜工場開発部門マネージャー・管理栄養士
金子 由香利さん(函館短期大学食物栄養学科卒業)

金子 由香利さん

「商品開発の仕事はどちらかというと、栄養士よりもフードスペシャリストで学んだことの方が生かされているかもしれません」そう話してくれたのは惣菜や弁当、寿司などを製造する工場で働く、ドリームファクトリー(コープさっぽろの子会社)の金子由香利さん。コープ本部の指示で行う商品製造と管理に加え、工場オリジナルの弁当などを企画し、工場周辺の道南、函館近くのコープに商品を送り続けている。

栄養士の金子さんは、同じく栄養士の母の勧めで資格取得を目指し地元の函館短期大学に進んだ。そこでフードスペシャリストの資格を知り、取得した。「栄養士になるならきっと役に立つと思いました」と振り返る。

卒業後はイタリアンでデザート作りや喫茶店の店長など、複数の仕事を経験した。前職は空港の手荷物検査員。土産物店に並ぶ食品が気になっていたという。資格を生かしたい思いが強まり、12年に栄養士として商品開発の仕事に就いた。

工場オリジナル弁当の企画開発はコストを考えた材料の選定から製造、バイヤーとの打ち合わせなど幅広い領域にわたる。栄養士でありながらもフードスペシャリストで学んだことが生かされているという。開発時のこだわりについても「栄養計算ができていればなんでも食べられるというわけじゃない。楽しくおいしく食べてもらう観点はフードスペシャリストで学んだことです」と教えてくれた。

今後はコロナ禍前に行っていた食の地域イベントをまた工場発で企画したいという。「子どもたちに機械で出したシャリ玉にネタを乗っけてもらう寿司作り体験などを実施しました。またそういうイベントができたら」と思いを語ってくれた。


カフェで店長 こだわりメニュー開発

カフェ&デリ「マルク」
庄司 梓さん(会津大学短期大学部食物栄養学科卒業)

庄司 梓さん

「『障がいのある人が働ける場所を』という母の思いと、料理のお店を持ちたいという私の思いが合わさってできたお店です」と語るのは、福島県会津若松市にある「カフェ&デリ マルク」で店長を務める庄司梓さん。同カフェは障がいのある人が社会で働くための支援をしている就労継続支援A型事業所で、運営母体はNPO法人などが多い中、あえてキープオンカンパニー株式会社という法人形態で行っている。

大学時代は法学部で学び、転職支援を行う企業に新卒入社。その後、退職時に本当に自分がやりたいことは何かと考えた。料理や食べることが好きで食べ物のことを知りたいと思った庄司さんは、地元の会津大学短期大学部食物栄養学科に入学し社会人学生になった。フードスペシャリストの資格は大学に入ってから知り、幅広く食の知識を得られることは今後役立つと感じ取得した。

実際に今の仕事に生きている。「フードスペシャリストで幅広く食について学んでいたので、行き詰まった際にはどこを取り出せばいいか分かりました。何も知らずに飲食店を経営するのではなく、知識があることは強いなと感じます」と自信を示す。メニュー開発時にも役立っている。会津はオタネニンジン(高麗ニンジン)の産地としても有名。栄養価は高いが苦みが強くクセがある。いかにおいしく味わってもらえるか、資格の勉強で得た「消費者目線のおもてなし」の知識を生かして飲みやすいポタージュを完成させた。

今後も「老若男女問わず、どんな人でも手軽においしく必要量の野菜を摂取できるこだわりのメニューを開発していきたいです」と語ってくれた。