開催日:平成19年11月23日(金)

 

 

名称 産直野菜を使った親子野菜料理教室
開催場所 神戸山手短期大学 生活学科(2号館)
実施責任者 原 知子

 

−報 告−


 参加者は本学近隣の小学生およびその保護者、合計41名(大人18名こども23名、一家4人での参加もありました。)
スタッフは、原と助手2名、学生3名、こども野菜クラブから4名(内1名は記録専念)、野菜提供者の増田氏(野菜のお話も担当。)会場には、当日使用する野菜の1ヶ月前の畑の写真(10月23日原が撮影)、こども野菜クラブの親子料理教室のパネル展示および開始までDVD放映。

8時30分 スタッフ集合。準備
10時 受付開始(受付担当は手伝いの学生2人)
10時30分 全員集合により定刻に開始。

イベント広告に関しては、近隣の小学校・幼稚園に案内したので、参加したこどもは小学2年生を中心に幼児から小学4年生まで。ただし、面識の無いメンバーも多いということで、アイスブレーキングゲーム実施。「はてなボックス」4個にお料理に使用する野菜を入れておいて、触覚だけで当ててもらうというゲーム:こかぶ、ほうれん草、葉つきにんじん、里芋をそれぞれ入れてありました。また頭の体操をかねて、じゃんけんゲーム、野菜の名前当てクイズ実施。

何の野菜か分かるかな 頭のじゃんけんぽんぽん
何の野菜か分かるかな 頭のじゃんけんぽんぽん

少々盛り上がって試食室は、笑いの中。リラックスしたところで、お料理の説明スタート。
まずは、衛生面から手洗いの注意、安全面から包丁の使い方、やけどに関する注意などを約束事としてお話。
 実習メニューは、ご飯・豆腐のそぼろあんかけ・みそ汁・こかぶの即席漬け、果物なますと黒豆(松葉にさしてそえる)。

ポパイサラダおかわり続出 盛り付け完了

  <親子料理教室配布レシピ>

 

レシピの説明、保護者とこどもたちが共同で仕上げていくもの、こどもたちだけで一品を仕上げるもの、注意点などをざっと説明し、いざ、実習室へ。
 エプロン、三角巾、タオルを身にまとい、中にはきちんとマスクをして参加してくださる保護者の方もいらっしゃいました。こどもたちの身長では、短大生の実習台は高すぎるので、ホテルオークラのキッズクラブから踏み台をお借りして使用。
こどもたちは、時間のくみたての注意どおり、ご飯を炊くことからはじめて、真剣に材料を切り始めました。原則4人1組で1つの実習台で仕上げてもらうということで、初めての方とのペアーやお友達の家族とのペアー、家族全員、など雰囲気はいろいろでしたが、どのペアーもうまく連携をとってかなりハイレベルでした。普段もっと幼い幼稚園の年少さんたちの多い料理教室実施に参加しているので、今回の小学生たちはとてもスムーズに進行しているように感じられました。

お豆腐は壊さないように慎重に お母さんと一緒に
お豆腐は壊さないように慎重に お母さんと一緒に かぶの葉っぱも使いましょう。 はい! 踏み台の高さいろいろ
必要でしたか?
やりたーい! (最年少参加者です。) お友達で仲良く作業 やり始めるとみんな夢中!  
 
果物なます ひとりでできるもん 慣れてますね 手つきがとってもいいですよね  


 赤だし味噌を使った味噌汁は、根菜をたくさんいれて、煮込んでいきます。大根やにんじんを大人がある程度細長く切って、その後をこどもたちに乱切りしてもらうという連携プレイもしてもらいました。赤だしの味は関西ではなじみが無いので子どもたちの反応が少し心配でしたが、意外にも自分たちで作ったということからか、残す子はいませんでした。味噌汁が飲めない子供が増えている傾向があるのですが、今回は全く杞憂でした。
 メインのタンパク質料理に豆腐を取り上げた理由は、やわらかくて切りやすいものの、扱いによってつぶれやすかったりと繊細さが必要になってくるということでした。軽く水きりした豆腐を1.5cm厚さにきって、粉をつけてソテー状態にするのはなかなか大変だったかもしれません。また、お肉やお魚は食事バランスガイドで数えていくと、案外とりすぎる傾向が高いので、今回は主菜的な献立には使いませんでした。
 かぶの即席漬けは、こどもたちだけでしっかり仕上げてもらうというもので、おいしいカブが手に入れば丁寧に切って、塩でもんで出来上がり。お料理が大変だということより、案外簡単に手軽にできる、という感覚を身につけてもらうのも狙いのひとつ。
保護者の方々は、こどもたちにできるだけ実際の作業を任せようという方、一緒に夢中になって作ってくれる方、といろいろでした。ご自宅で親子だけで一緒に調理する場合と、多くの人たちと一緒にする場合とではまた雰囲気が違って、他の子供たちや保護者の状態も観察することができますし、こどもたち自身も、甘えが自宅でよりは少なくなるように感じられます。
 果物なますは、本学の学生がレシピを作ってくれました。子供たちは、酸っぱいものがやや苦手な傾向があるのですが、果物を使うと食べやすいので、なますという料理になじんでくれたかと思います。これもこどもたちだけで簡単に作れるレシピです。
 サポーターたちが作ったポパイサラダと黒豆(松葉に一つずつ手で通してもらいました)も一緒に盛り付けて、完成。おなかもすっかりすいて、全員で大きな声で「いただきます」。赤茎ほうれんそうやミニキャロットの葉を使ったポパイサラダはおかわり続出で、なかなか好評でした。豆腐あんかけの付け合せのレンコンチップも「追加注文」が多く、レンコンの嫌いな人にも食べやすい食べ方としてお勧めでした。

野菜のお話
 食事の時間を利用して、無農薬野菜を提供していただいた増田さんから、野菜のお話。里芋の、直径30cmもあるような大きな株を持ってきてくださって、その迫力に圧倒されました。
 自分たちが今食べている野菜たちがどんな風に作られているか、農薬や殺虫剤を使わないと、畑の上を飛んでいる蝶々の数がどんなに違うか、などなど、普段はそこまで思いをめぐらせないようなお話を聞きながら食事をしたので、食卓に出てきた野菜から、どんなに苦労して作られたものか、どんなに時間をかけて育てられたものか、などを想像してもらえたのではないかと考えています。
 野菜のお話がメインでしたが、少し欲張って、食事バランスガイドを用いて、主食、副菜、主菜、果物、乳製品、などについての説明もしました。(学生の作ってくれた手作りの料理カードを使ってバランスガイドの料理分類の説明をしました。)資料として、青果物健康促進委員会(近藤卓志氏代表)から、「食事バランスガイドで健康家族はじめよう!」「作ってみよう!食べてみよう!」のパンフレットをご提供いただき、配布しましたので、自分自身の食事のチェックをはじめ食事のこと、お料理のことを、ご家族で話し合ったり、実際に一緒に作ったりする際の資料として活用してもらえると考えています。

野菜のお話 その時期に取れる野菜を食べよう 寒いと凍らないように甘くなる
 
食事バランスガイドで食事チェック
ふりかえりシート記入中
 

使用した食器などをすべて全員で片付けて、まとめ。
増田氏の作ったさつまいもを用いて、あらかじめ学生サポーターがスイートポテトを作ってありましたので、お茶休憩をとりました。その後こどもたちに振り返りシートを記入してもらいました。
 残った野菜を少しずつおみやげに、14時25分ごろ解散。
長い時間の作業でしたが、こどもたちは元気にご挨拶してくれました。

 

振り返りシートでは、
1 お料理するのは楽しかったですか?
2 みんなと一緒に食事をするのは楽しかったですか?
3 おうちでお料理の手伝いをもっとしようと思いましたか?
4 食事に出てくる野菜から、畑で作っている人の大変さを知ることができるようになりましたか?


という項目について、5段階のフェイス(例えばとても楽しかった、楽しかった、ふつう、あまり楽しくなかった、嫌だった)に○をつける形で回答してもらったところ、参加した当日の雰囲気の影響か、ほとんど全員が、とても楽しかった、とてもよくできたなどの好評価でした。
 「またやりたい」、「また来たいです」、というコメントがついている結果を見たときには実施したものとして、ほっと安心しました。

 1回きりのイベントでは、どんな効果がでているかは、全く不明ですが、少なくとも、迫力ある野菜に感動したり、普段あまり食べることのない、にんじんの葉を食べたり、豆腐の柔らかさに悪戦苦闘したり、しっかりお料理して働いて空腹になっているときに赤だしのお味噌のにおいが漂ってきたり、味見をしたり、こかぶを切って塩もみするとかたかったものがしんなりと一塊になるのを実感したり、何より自分たちで包丁を使って硬いものややわらかいものをきったり、と五感をフル活用する時間を過ごしてもらえたのではないかと思います。こどもだけで完成するものがあると達成感も感じてもらえると考えています。さらに一緒に分担して作業するということで共同作業の楽しさも感じてもらいたいと考えておりました。
こどもたちはいろいろやってみることが楽しくて仕方がないようです。その「やる気」をどんどん伸ばせるように、なにより「楽しかった」というイメージが定着してもらえたら幸いです。
加工品が氾濫して、何が入っているか少々不安にさいなまれる昨今、フードディフェンス、という意味でも、自分たちの味覚を鋭敏にしておくことは大事かもしれません。味覚を育てるには、素材の味、調理後の味をしっかり経験することが大切ではないでしょうか。食事の準備をする際に、こどもに手伝ってもらうより、自分でさっさと済ませるほうが簡単ではありますが、こどもたちの感覚陶冶、作業中のコミュニケーションという観点からも、できるだけ一緒に作業をしてみるということがより必要になってくるのではないでしょうか。大人の方にとっても、そういうきっかけ作りに貢献していれば幸いです。

最後になりましたが、
記事掲載していただきました食糧新聞社村元さま、無農薬野菜を手配いただき、また野菜について、生産者としてお話いただいた増田大成氏、記録やパネル展示、当日のお手伝いをお願いしましたこども野菜クラブのメンバー、メニュー作成上ご相談させていただきました土井信子氏、踏み台をお借りしましたホテルオークラサロンキュリネール、参加者を募るために、ご協力いただきました近隣小学校・幼稚園の先生方、
ご参加いただきました方々に、お礼申し上げます。メニュー検討、手伝いなどにゼミの学生も参加しましたが、イベント参加の過程で目に見えて成長いたしました。