食に関する一般向け啓発事業

名  称 『湯けむり健康教室での料理講習会』
開催日程 平成22年10月8日(金)、22日(金):事前調査・栄養指導
  平成22年12月3日(金)、10日(金):講義・料理講習会
開催場所 別府大学 食物栄養学科
実施責任者 平川 史子

―報  告―

【目 的】

別府大学では、2004年より別府市の高齢者を対象として地域特有の豊富な温泉を利用した水中運動と、ステップ運動を組み合わせた運動療法、および栄養療法を取り入れた「高齢者の健康・体力づくり教室」事業を展開している。

今回、健康教室へ参加している高齢者の体格・体組成(身長・体重・体脂肪量)、血圧および栄養素等摂取状況を調査し、対象者に合わせた栄養および料理講習会を実施し食生活の改善へ繋げることを目的とした。

【実 施】

(1) 対象者

別府市在住の67~78歳までの男女27名(男性5名、女性22名)

 

(2) 実施内容

①事前調査(平成22年10月8日)

身長、体重および体脂肪量は、身長計付き体組成計(TANITA社製TBF-215)、血圧は、自動血圧計(omRom社製)を用い測定を行った。

栄養素等摂取量について、対象者へ3日間の記録法による食事調査を行い、エクセル栄養君Ver.5.0(建帛社)を用い計算を行った。なお食事調査は、対象者一人ひとりに学生2名配属し、記入方法の説明や提出された食事内容の確認を丁寧に行なった。

 

②個別栄養指導(平成22年10月22日)

事前調査時の調査結果表を基に個人に合わせた栄養コメントを作成し栄養指導を行なった。

③減塩食、減脂肪食の料理講習会(平成22年12月3日、10日)

2回に分け料理講習会を開催した。今回、テーマとなった減塩食、減脂肪食についてそれぞれの講義および減量に関する講義を行い、脂肪酸の種類や働き、塩分摂取と血圧上昇のメカニズムなどを説明した。
メニューは、別府市の地獄蒸しをイメージした蒸し料理や酸味、香味野菜、酒粕なども取り入れ、減塩、減脂肪でも美味しくいただけるような内容にした。
対象者を1回の講習会につき8班に分け、それぞれ学生を3~4名ずつ配置し、調理実習を行なった。試食時には、今回の献立のポイント等を復習しながら対象者との交流をはかった。

(12/3分のレシピはこちら)

【まとめ】

 「日本の将来推計人口」(平成18年12月)によると、我が国においては平成12年に全人口の6人に1人であった65歳以上の高齢者が平成37年には全人口の3.3人に1人になると予測されるなど急速に高齢化が進行している。超高齢化社会への道を歩みつつある我が国において、高齢者の健康を保持増進し、疾病や寝たきりなどによる要介護状態を予防し健康寿命を延伸することがますます重要な課題となっている。

「国民生活基礎調査」(平成19年)によると、要介護の原因の1位は脳血管疾患であり、5位に骨折・転倒となっている。現在、全国各地にて生活習慣病の予防や転倒骨折予防を目的とした健康教室が数多く行われ、高齢者自身のQOLの向上や地域の活性化という面で大きな役割を果たしている。

食事に関しては、言うまでもなく生活の中での楽しみのひとつであることに間違いない。しかしながら、今回の実習テーマとした「減塩、減脂肪」の観点からみると、「国民健康・栄養調査」(平成21年)では、食塩では20歳以上の男性で約70%、女性で約72%の者が目標値より多く摂取している。また、脂肪摂取状況をみても、20歳以上男性で約20%、女性で約28%もの者が脂肪エネルギー比率30%以上いう状況にある(H21国民健康・栄養調査)。このことからも、我が国全体に目を向けたときに、まだまだ食に関して改善余地が大きいことがわかる。

生涯を通して食生活を楽しみ続けるためには、食知識・態度・スキルの向上によって食行動が改善される必要がある。そのためのサポートを行い地域社会に貢献することこそ地域に根ざした大学のあるべき姿だと考える。

【今回、受講生の感想】

学生のお話を聞いて自分なりに努力してみようと思いました。
何歳になっても食べ物はいつもついてまわります。日頃から気をつけたいと思います。
調査力・把握力・分析力がどれも素晴らしかった。内容を要領よく、わかりやすく解説してくれました。
少ない塩分でもおいしく食べられることがわかった
脂肪がどれに多く含まれているか?ということで、かなり間違った思い込みがあることを知りました。
朝昼夜食の脂肪の摂り方、量など自分で気を付けなければならないと思いました。
昨年より今年の方が、体力が落ちていると実感することが多いので、少しでも食事に気をつけようと思った。
などの数多くの意見を頂き、受講生の食意識の改善に繋がったものと考える。
また、参加した学生にとっても、栄養指導の実践を通して地域住民との交流および自身のスキルアップに大きな役割を果たしたものと考えられる。別府大学では今度もこのような場を設け、地域の食の情報発信源として活気ある高齢社会へ貢献していきたいと考える。