日 時:平成22年6月26日(土)14時~16時
場 所:福岡市中央区天神 エルガーラホール
開 催:筑紫女学園大学短期大学部 現代教養学科
共 催:社団法人 日本フードスペシャリスト協会
講 師:群馬大学教育学部 教授 高橋久仁子先生
講 演:「健全な食生活をめざして ~ともにつくり・食べ、生きる~」
健康に対する関心の増加とともに食品そのものだけでなく、栄養補助食品や健康補助食品と呼ばれる商品の宣伝も急速に増えているが、これらの食情報の中には、フードファディズム(食べものや栄養が健康や病気へ与える影響を過大に信じること)がたくさん紛れ込んでいる。健全な食生活を営むためにはフードファディズムに惑わされないこと、或いはそこから脱却すること、そして食の男女共同参画が必要である。このような誰にでも関係する食情報や食生活に対する考え方を見直してもらう啓発事業として本講演会を実施した。
雨天にもかかわらず、受講者数(募集定員:一般100名)が210名(男:18名、女:192名、うち本学学生:116名)
参加者が多かったのは、開催数日前に当地の有力新聞に開催情報が掲載(新聞の内容はこちら)されたためでもあろうが、やはり食事や健康についての関心が大きいからだと思われる。
司会の速水学科長から、今回の講演会は3年前から開催している「食と農」のシリーズの1つであり、今回は特に日本フードスペシャリスト協会との共催であるという経緯説明の後、講師の高橋先生について1990年代に日本に初めて『フードファディズム』という言葉を紹介され、その後も一貫して現代の食の分野における「ウソ」も混じった様々な食情報に流されないように、様々な提言をされていますという紹介があった。
高橋先生の90分間の講演はパワーポイントのスライドを使って行なわれ、重要なスライドについては印刷したプリントが、補助資料として参加者全員に配布されていた。講演内容は、下記に示す。講演後には、参加者との活発な質疑応答が約20分間行なわれた。
シナモン、寒天、白インゲン豆など健康情報娯楽番組で発生した問題を例に挙げられ、テレビの情報は事実と違っていたり、大げさに書かれていたりなど、番組構成に都合のよいことだけを強調する傾向があるので、それらの情報を批判的に読み解く力が必要である。
食べ物や栄養が、健康や病気に与える影響を過大に評価したり信じたりするということで、タマネギやニガウリを食べて糖尿病の血糖値が下がるという情報では、血糖値を下げる効果のある物質は含まれているが、ごく微量であるため、その食品を普通に食べても血糖値が下がるような効果は出ない。
有害物質や医薬品成分を含む健康食品もあり、JHFAマークはその健康食品を摂取しても特別な害は無いということを保証しているだけで、健康効果を保証しているわけではない。
宣伝文句は「○を飲めば、肌がツルツルになる。」のような断定した文章になっておらず、曖昧な表現でしか書かれていないのに、消費者が宣伝文句の行間を自分の期待感に合わせて解釈するので、騙されてしまう。したがって、宣伝文句ではなく、栄養成分表示を読むべきである。
買い物に行ったり食事を作ったりなどの食事に関することは女性だけ仕事ではなく、家族みんなの仕事であり、お弁当もパターン化すれば誰にでも作れるようになると、自分の実践も加えて説明された。
主食、主菜、副菜を必要なだけ適度に摂取することが大切であり、そこそこの健康とほどほどの食生活という目標が良い。
質疑応答では、スポーツドリンクの利用法、食品中の塩分量の表示法、健康食品の宣伝に関わっている大学教授の信頼性、食品とタバコの(害の)関係、正しい食情報の入手方法について5つの質問があり、それぞれに対し丁寧にお答えいただいた。
講演終了後、一般参加者にアンケートを実施し、80名(女性59名、男性14名、性別について未記入7名)から回答を得た。
参加者は、10代2名、20代3名、30代7名、40代6名、50代21名、60代21名、70歳以上18名、年齢について未記入2名という幅広い年齢層でした。「講演会を何で知りましたか」の回答は、「ダイレクト・メール」11名(14 %)、「チラシ」12名(15 %)でしたが、今回は特に「新聞・広報誌」47名(59 %)の情報が最大だった。
講演内容の満足度については、「非常によかった」54名(68 %)、「よかった」23名(29 %)、「ふつう」2名(3 %)、「無記入」1名(1 %)でしたが、「非常によかった」と「よかった」を合わせると、77名(96 %)の高率であり、ほとんどの参加者に満足していただけたということが言える。
実施責任者(報告者):筑紫女学園大学短期大学部 現代教養学科
学科長 速水良晃