一般向け啓発事業報告書

食育講座「地域の食材を学ぼう、いかそう」

仙台白百合女子大学人間学部健康栄養学科

実施責任者 髙澤まき子

日 時 7月31日(土)、8月7日(土)、21日(土)、28日(土)

場 所 仙台白百合女子大学

1.はじめに

温暖な季節であったり、多雨な季節であったりと四季がはっきりしている日本は、大量の水と高温が必要とされる稲作に適した農業環境をもっている。このような風土の中で、米を主食とし、魚類、豆類、イモ類、野菜類などを副食とした「日本型食生活」が育まれてきた。戦後、経済成長を成し遂げた日本は、水産物、畜産物、野菜、油脂類などの消費が増加し、1980年代にはたんぱく質、脂質、炭水化物のエネルギー比率のバランスの良い理想的な食生活になった。その後、食生活は洋風化が進み、脂質エネルギーの比率が増加し、炭水化物の比率が減少して、戦後、数十年の間に日本の食生活は大きく変化した。

一方、農業界では、農林水産省を中心とする官僚統治型が確立され、選択的拡大や農作物の単一化、主産地の形成などの近代政策がとられてきた。この農作物の単一化・大量生産に大きく貢献したのは、化学肥料と農薬の使用であり、交通網の発達、冷凍冷蔵輸送技術の開発に支えられ、大量生産、大量遠隔輸送が確立した。このような方法は、食生活を豊かにしたものの、食物の生産と流通の地域性、つまりその地域内での生産と消費をなくす働きをしてきた。その結果、生活者は近郊農家からではなく遠隔輸送された、安くて、化学物質の含まれた農産物を購入するようになり、フードマイレージ指数が大きくなっていることやわが国の自給率が40%と低下していることなどが指摘されている。さらには、BSE問題、様々な食品偽装事件の発生など食の問題がクローズアップされてきた。今日では生活者の食の安全・安心への関心が高まり、店頭に生産者の顔が見える農産物が並べられたり、地元食材のコーナーが設置されるなど、食と農との距離が徐々に身近になってきてる。
 私達の住んでいる宮城県に目を向けてみると、県が「食材王国」と掲げるほど、海の幸、野の幸、山の幸に恵まれ食材の豊富な地域である。今回の講座では、宮城県で生産されている農産物について、どの地域で主に何が生産されているのかを再認識し、地元の新鮮な旬の食材の扱い方を知ってもらうことを目的とした。そして、今後ますます地域生産地域消費の活性化につなげていきたいと考え、食育講座「地域の食材を知ろう、いかそう」を開催した。

 

2.事前準備

大学広報室を通してポスター、チラシを作成し、町内、公民館、区役所、仙台市内の大学、マスコミ関係に配布。

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大学HPに掲載。
5月初旬から7月23日までを申込期間とした。
講座テキスト・資料、参加者アンケートの作成。
参加申込者への詳細案内状送付。
講座アシスタントとして健康栄養学科加賀山あかり助教、左右田晴美助教、目黒美紀助教、矢島由佳助教、世永明美助教の5名に依頼した。
実習スタッフとして健康栄養学科4年生を募集した。(6名)

 

3.実施

7月31日(土)

9:30~ 受付

10:00~10:15 開講式

健康栄養学科石出学科長挨拶

講座の講師の紹介

諸連絡等

参加者数 15名(男1名、女14名)

講座の看板   石出学科長挨拶   講師紹介

 

 

*講座内容

第1回(7月31日 10:20~11:30)宮城県における食料の生産と消費 (講演) 

講師 みやぎ食育コーディネーター 増子 裕子

宮城県の自給率は約80%であること、県内市町村別園芸作物出荷状況、活動の場である登米市を中心とする生産出荷・自給状況、消費拡大のための地元食材を用いた食育イベントについて、また生産農家では多収穫された場合、規格外の農作物は乾燥させて保存食として消費していたこと等について解説された。さらに、宮城県北部でたくさん生産されている花ニラや沿岸部で養殖されているわかめを用いて手軽に調理できる花ニラいりきゅうりのドレッシング漬け、わかめのしぐれ煮が紹介された。

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第2回(8月7日)宮城県産大豆を使った豆腐づくり(実習) 10:00~13:00

講師 健康栄養学科教授 岩淵せつ子

宮城県産大豆の生産状況、品種、栄養と機能性、古くから工夫され消化を高めた大豆加工品のあれこれ、豆腐の製造方法の要点を解説された後、実際に宮城県産大豆「ミヤギシロメ」を用いて豆腐の加工実習が行なわれた。また、大豆の青臭さやえぐ味を改良した宮城県産の新品種「きぬさやか」の豆乳と一般のものとを試飲してもらい、その違いを知ってもらった。参加者らは、今回のできあがった豆腐、おからを家庭に持ち帰り手作り豆腐を1品料理としたい、また豆腐の作り方は要点をつかめば家庭でも作ることができると感じ、今後は手作り豆腐を楽しみたいと意気込んでいた。

左側がきぬさやか豆乳   豆腐の完成   おから

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第3回(8月21日)地元野菜入り弁当の献立(実習) 10:00~13:00

講師 健康栄養学科准教授 佐々木ルリ子

地元食材、特に旬の夏野菜の持ち味を生かす工夫、適当とされるライフステージ別弁当箱のサイズや栄養価、詰め方の要点等、幅広く解説された後、弁当の献立実習が行われた。受講生らは、詰め方の要点に気をつけながら、楽しく思いのままに、できあがった御飯やおかずを弁当容器に詰めていた。同じ弁当の中身であっても、詰め方の違いによって個性的な弁当ができあがっていた。今回のような地元の野菜に焦点をあてた内容は野菜の摂取不足解消の推進につながると思われた。

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第4回(8月28日)米粉でスイーツ・ア・ラ・カルト(実習) 10:00~13:00

講師 健康栄養学科准教授 高澤 まき子

今日では、米粉を材料とするお菓子が注目を浴びている。宮城県は米作りの盛んな地域で、米消費拡大につなげるために、米粉の種類、それらの製造工程、米粉を用いたお菓子の数種類を紹介した。その後、3種類(スノーボール、ブラマンジェ、ロールケーキ)の実習を行った。実習後は、作成したお菓子を試食しながらお茶会を行い、閉講式も兼ねた。

スノーボール ブラマンジュ ロールケーキ
    スノーボール   ブラマンジュ   ロールケーキ

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4.参加者アンケート結果(回答者14名)

今回の講座の参加者は、年代別でみると20代1名、40代4名、50代3名、60代3名、70代3名であった。講座を知ったきっかけは、新聞で知った人が多かった。講座の内容については、参加者らはすべての講座に興味を持たれ、「宮城の食材のすばらしさを再認識することができた」、「食材を生かす献立実習であった」、「身近な食材で簡単にできることやバランス・見映え等がよく、他県からの来客へのおもてなしの参考になった」などの感想をいただいた。今後どのような講座を希望するかについては、今回の参加者から反映し、「食と生活習慣病との関連」「高齢者の食事」などが多かった。

(アンケート詳細結果

 

5.おわりに

今回の講座では、宮城県の食材に焦点をあて、親子での参加可能な内容で実施したが、参加された方々の多くは40~70代で食経験の豊富な方ばかりであった。しかし、あらためて宮城の食材の素晴らしさを再認識された方々が多く、講座内容はバラエィーに富んだものであり、今後もこのような機会があれば参加したいとの好印象を持たれたようであった。一般に新しいものを求めがちであるが、地元に目を向け、旬の食材を如何に工夫していくかを継続的に伝えていくことによって、自ずと地産地消の活性化につながると感じた。


今回の講座に助成していただきました社団法人日本フードスペシャリスト協会に感謝申し上げます。