「アルコールハラスメント」略してアルハラという言葉が一般的になって久しいが、それでも年に数件は飲酒の事故で人が亡くなっている報道を目にする。実際、この報告書を執筆しているさなかに、サークルでの飲み会において大学生が急性アルコール中毒で亡くなったとの報道を目にした。このような状況から、自分のお酒の強さを知り、それに応じた健康的な飲み方が出来るようになる事で、飲酒による事故、死亡者、アルコール関連疾患の罹患者を減らしたいという考えから、松本大学の大学祭である「梓乃森祭」にてアルコール代謝ならびにその遺伝による影響に関する展示およびノンアルコールカクテル販売の模擬店を行った。
展示では、沖嶋研究室の学生が作成した、お酒の強さを決める遺伝子についてなどに関する一般向けのポスターを掲示、閲覧してもらう事と、パッチテストの体験およびその結果に基づく飲酒指導、希望者には遺伝子検査をするためのDNA採取を行った。
模擬店では、バーで使用しているのと同様の材料を用いたノンアルコールカクテルを販売することで、お酒が飲めない人でもカクテルが楽しめる事をその販売を通して周知した。具体的には、NBAオフィシャルカクテルブック(柴田書店)から、来場者が好みそうなカクテルとしてシンデレラ、シャーリーテンプルを、その他インターネットでレシピ検索を行いバージン・チチやセーフ・セックス・オン・ザ・ビーチ等を、また、本年はノンアルコールのワインテイスト飲料やスパークリングワインテイスト飲料が多く商品化されるようになった事から、これらを用いてノンアルコールのミモザ、キール、キールロワイヤルを販売、ならびに展示来場者に試飲提供した。
展示への来場者数は2日間で131名、年齢層は10代~80代で、最も多かったのが40代~50代で大学生の保護者および本学への入学を希望する受験生の保護者の年齢層であった。次いで大学生世代である10代後半~20代前半が多かった。
パッチテストを行った来場者には、その結果を元に、飲酒指導を行った。白型(飲めるタイプ)に関しては、飲めることで逆にアルコール性肝障害やアルコール依存症の可能性が高まるので飲みすぎに注意する事、自分が飲めるタイプなので、飲めないタイプへの理解が乏しいため、無理強いしない事をアドバイスした。白赤型、赤型(ほとんど飲めないか、全く飲めないタイプ)に関しては、飲めないタイプであるため場合によっては命に関わる事もあることから、決して無理しない事、ノンアルコールの飲料を上手に利用してその場の雰囲気を楽しむことをアドバイスした。展示来場者には模擬店で提供していたノンアルコールカクテルを無償提供し、試飲してもらった。また、このパッチテストをきっかけに来場者と遺伝子検査やお酒の飲み方についても話が広がり、一般人に向けた活動としては有意義になったと思われる。
反省点としては、多くの来場者がパッチテスト結果に満足し、遺伝子検査を希望する者が少なかった事である。パッチテスト結果を告知する際、「あくまでパッチテストは簡便な検査でおおよその結果はわかるが、パッチテストと遺伝子検査の結果が違う人もいる。」事を説明はしたが、周知が徹底できていなかったと思われる。次年度はパッチテストと遺伝子型の食い違いについてのわかりやすい資料を作成し、遺伝子検査の希望者を増やしたいと考えている。