開 催 日:平成26年8月30日(土)
開催場所:くらしき作陽大学 6-101教室および調理試食室主 催:くらしき作陽大学 食文化学部 商品開発交流研究センター
協 力:さくようヘルスケアレストラン
講座参加者:80名(本校学生・教職員 約10名、一般市民 約70名)
くらしき作陽大学食文化学部では、大学が立地する地域市民に、食物のもつ健康維持機能をあらためて見直し、健全な食生活の実現を啓蒙するために種々の活動を行ってきたところである。今回は、フードスペシャリスト協会との共催という形で、DHAの健康機能性と上手な摂取をテーマとした講演会およびDHA入り料理の試食会を実施した。特に、試食会では本校の教職員向けに健康によい料理を提供している「ヘルスケアレストラン」の全面的な協力を得て、DHAを取り入れた夏にふさわしいシーフード夏野菜カレーをはじめとした料理一式を提供し、参加者に好評を得た。
氏は、長い間、民間企業の食品開発研究に携わり、DHAをはじめとした機能性油脂に関して多くの特許を取得してきた経験を有している。この知見をもとに、今回、DHAの人体に対する機能性や油脂としての特性を分かりやすい形で紹介し、推奨されている1日1gのDHAを食品から上手に摂取するためにどのような工夫が必要かを講演してもらった。
万倉氏は、表題にあるとおり、ややもすると、いたずらにサプリメントに頼りがちな風潮を脱し、普段の食事の中で上手にDHAを摂取する観点から、DHAの基礎知識と健康への効果などの話を中心に講演していただいた。その内容は概ね次の通りである(文責 原田節也)。
①DHAの正体
脂肪酸の一種であるDHAの化学式の特徴をわかりやすく解説し、DHAが人間の脳機能の働きを改善する効果があることなどその機能性を解説した。また、世界各地で消費されるDHAを魚油から得るためにはカツオやマグロなど漁業資源が非常に逼迫していることを訴え、そのためにDHAを上手に摂取することが必要であるとした。
②DHAを抵抗なく摂取するには魚臭をいかにコントロールするかにかかっている。
魚油の中に含まれる臭い成分を明らかにし、酸化とともにどのように変化するかを解説した。この魚臭を除去するために現在どのような方法があるかを解説し、家庭料理で実用的な方法としてジンジャーオイルやオレンジオイル、あるいは卵を使ったマスキング法が手軽であることを料理事例を交えて解説した。
③今後の課題
DHAの原料である魚油は有限資源であり、各国の食文化のありかたにも深く関わっている。魚を主な食料資源としてきたわが国は今後世界との摩擦をいかに避けていくかが重要である。また、科学的には魚油の酸化防止技術の高度化や機能性評価をさらに研究していくべきであることなどが述べられた。
食文化学部では学生が中心となって本大学の教職員・学生を対象に食事を通じた健康管理をねらいとして毎週2回「ヘルスケアレストラン」を開設している。今回の講座でレストラン関係者に全面的に協力してもらい、DHAを1日1gの摂取することを考えた料理を学生から募集し、その中で優れたものを参加者に試食してもらった。さらに、できるだけ野菜を多く摂取し、減塩と栄養的にバランスのとれた食事となることも配慮し、色合いも工夫した料理としている。
料理メニューは、以下の通りであり、総エネルギーは655kcal、含有DHAは1gである。
(料理作成者 教員:渡辺和子、佐々木妙子、神崎圭太 学生:8名)
なお、試食に際して料理を調理した学生によって、メニューの紹介とDHA利用の工夫などを説明し、参加者の料理に対する理解を深めた。その後、後に述べる料理に対するアンケートも実施した。
講演会と試食会終了後、参加者にアンケートをお願いし、70名から回答を得た。
回答者はどちらかといえば、高齢者が多く、この講演内容に好意的であったこと等のバイアスを考慮しなければならないが、アンケート結果の概要は以下の通りであった。
(1)回答者の属性
下記に示すように、圧倒的に女性が多く、しかも60歳以上の年配者の参加が目立った。
性 別:男性=10%、女性=90%
年齢別:20~30歳=1.4%、30~40歳=1.4%、40~50歳=0%、50~60歳=15.7%、60歳以上=81.4%
(2)講座参加者の居住区
参加者は大学が立地する玉島区域と近隣の倉敷区域からの参加者が多かった。
玉島区域=38.6%、倉敷区域=31.4%、その他岡山県内=30.0%
(3)講演に対する印象
①大いに役に立った=81.4% ②少しは役にたった=17.1% ③その他=1.5%
と分布し、その他の無記入が1.4%あったものの、「役に立たなかった」という否定的回答はゼロであった。
また、自由記入式で講演に対する印象を尋ねているが、79%の回答があり、添付した回答結果表をみるかぎり、いずれも、DHAの内容について印象に残った人が多い。
以上のように、食問題に関心の高い女性、しかも健康問題を気遣うようになる高齢層の参加者が中心ではあったが、講演内容に対する満足度も高く、DHAへの関心を高めた結果となっているので、講座開催の目的はほぼ達成されたと考えている。
講演会に参加した市民に試食後の感想をアンケート調査した。
(1)食事の美味しさ : 5段階評価で平均4.7であり、概ね美味しいと感じられた。
(2)好みの適合性 : 5段階評価で平均4.6であり、概ね美味しいと感じられた。
(3)食環境に対する印象
食事環境の演出に対する平均的印象は以下の通りであった。
①カジュアル性:1.1 | ②落ち着いた雰囲気:1.1 | ③親しみやすさ:1.5 | ④楽しさ:1.5 |
⑤明るさ:1.6 | ⑥高級感:0.8 | ⑦おしゃれ感:1.2 | ⑧年配向き:0.8 |
⑨日常的:1.0 | ⑩伝統的:0.5 | ⑪日本的:0.8 | ⑫家庭向き:1.3 |
(この数値の意味は2が最大のプラス評価で、0が普通、-2が最大のマイナス評価である。)
全体を通してみると、料理そのものについての満足感は4以上と高く、提供した料理・盛り付け・器・POPなどの演出に対してマイナス評価はなく、明るくて楽しい雰囲気であったこと、適当におしゃれ感もあり、家庭向き料理であることなど、こちらが意図していた演出がほぼ成功している。
今回の公開講座の出席者数は必ずしも多いとは言えないが、この種の公開講座としてはまあまあの数字であり、関係者一同喜んでいる。特に、今回の公開講座はフードスペシャリスト協会の助成をいただいたおかげで、試食会を開催することができ、話だけではなく、実際に食の体験を通じてDHAへの関心が高まったと考える。最後になりましたが、厚くお礼申し上げます。