松本大学人間健康学部健康栄養学科
専任講師 沖嶋 直子
【背景】近年、食物アレルギーを持つ子どもが増加しており、幼児の5%程度が何らかの食物アレルギーを持っているという統計資料もある。子どもの三大アレルゲンは鶏卵(食物アレルギー患児の50%)、乳(同20%)、小麦(同7%)であり、鶏卵、乳は良質のたんぱく質、乳はカルシウム源でもある事から除去すると他の食材で補わなければならない事、小麦はパン、麺類、菓子類の原材料でもある事から除去が困難である。このような背景から食物アレルギー患児の保護者はアレルギーを持たない子どもの保護者よりもストレスや負担感を強く感じている事が国内外で報告されてきている。これらの背景から、沖嶋ゼミナールでは、保護者の負担感を軽減し、食物アレルギーを持つ子どもが安心・安全な食生活を送れるようにするために、①出来る限り小売店で購入できる食材を用いた、特定原材料7品目除去メニュー考案、②家庭内でのアレルゲン混入要因の実験的解析、を行ってきた。本啓発活動では、これまで行ってきたメニュー考案ならびに研究内容をさらにブラッシュアップさせ、その成果を一般に公表する事を目的とした。
③除去食写真
かぼちゃをベースとして見た目を似せた卵焼きもどき |
小麦粉、鶏卵を使用せず、高野豆腐で代替した和風コロッケ |
小麦粉を米粉で代替した焼き餃子 |
海老を使用せず、魚のすり身でエビを模したエビチリ |
卵を使用せず、豆乳をだし汁で割り 寒天でゆるく固めた冷やし茶碗蒸し |
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牛乳を使用せず、アーモンドミルクで代替した杏仁豆腐 |
小麦粉、鶏卵、乳製品を使用せず、大豆粉、アーモンドミルク、ココアパウダーで代替したガトーショコラ |
乳と鶏卵を使用せず、豆乳と野菜・果物混合ジュースと凝固剤で代替したプリン |
【方法】平成27年10月17から18日に開催された、松本大学大学祭のゼミナール展示において、これまでの研究、考案の成果、ならびに本助成金を頂いて完結させた研究、考案の成果をポスター展示し、来訪者に見学してもらった。 【結果】アーモンドミルクを用いたレシピとして、その風味を生かした乳抜きの杏仁豆腐のレシピを考案した。その他、大豆粉と米粉を併用した電子レンジで簡便に調理できるカップケーキのレシピを考案した。その他、特定原材料を他の食材で代替した10種類以上のレシピを考案した。大学祭の展示では、2日間で78名(17日38名、18日40名)の来訪者を受け入れた。来訪者の負担になり、訪問人数が少なくなることを懸念したためアンケート等は実施しなかったが、参考になったというコメントを下さる来訪者が多かった。また、誤食による事故等を懸念して、事前に試作したレシピは掲示に留め、来場者には試食いただくことが出来なかったが、今回試食はないのかという質問も複数いただいたため、今後はアレルゲン混入に十分配慮して調理した物を試食いただくことも考慮に入れたいと感じた。