1.概要
高齢化社会を迎え、シニア世代の健康長寿のためには、健全な食生活を営むことが大切である。しかるに、現在、栄養バランスの偏り、低栄養、孤食化など様々な課題が生じている。
「食」は社会の縮図であり、これらの課題に対しては、シニア本人と家族、地域社会、食に係わる企業や団体が連携して取り組む必要がある。
このため、シニア世代の人々やこれに影響力を持つ関係者を対象とし、「食と健康保持」をテーマとして、高齢者の食の多様性と健康に関し国内外でフィールドワークに携わっている木村友美氏と味覚認知のメカニズムを研究している朝倉富子氏にその研究成果の概要を紹介いただき、「食」に関する業務に携わる人々及び一般シニア市民の啓発をおこなう。
(3)開催日時・場所
海運クラブ ROOM303号会議室 東京都千代田区平河町2-6-1
平成27年10月30日13時30分~16時45分
(4)参加者
人 数: 45人
対象者:食に関心を持つシニア世代の人々やこれに影響力を持つ食品企業・団体の広報・商品開発・品質管理等の関係者、食育関連団体関係者
年齢層:概ね40代~60代
(5)講師
・木村 友美 京都大学東南アジア研究所 学振特別研究員
・朝倉 富子 東京大学大学院農学生命科学研究科 特任教授
(6)実施責任者
公益財団法人すこやか食生活協会専務理事 門間 裕
2.講演の概要
① 健康長寿と食習慣~国内外のフィールド調査から~
講演者:木村 友美
京都大学東南アジア研究所 学振特別研究員 医学博士(社会健康医学)
講演概要
バラエティ豊かな食品の摂取が推奨されており、実際に世界各国の諸研究で、多様な食品の摂取と長寿との関連性が報告されている。
また、食の多様性は、加齢に伴い低下することがわかっている。食の多様性と高齢期の包括的な健康度(身体的、心理的健康)との関連を、高知県及びヒマラヤ高地地域での調査結果により紹介した。また、食多様性低下の一因と考えられる咀嚼能力に注目した国内外の地域調査成果についても紹介した。
② 味覚と健康~塩味を中心に~
講演者:朝倉 富子
東京大学大学院農学生命科学研究科 応用生命化学専攻
味覚サイエンス研究室 特任教授 博士(農学)
講演概要
食品には、栄養素を供給する一次機能、嗜好性に関わる二次機能、そして、身体の調子を整える三次機能がある。この中で、最も食品らしさを示すのが二次機能の「おいしさ」である。美味しく食べることは、身体の生理機能の更新にも大切であることがわかってきた。美味しさは五感すべてで感じるが、特に「味覚」、中でも塩味は、最もおいしさに関わる要素であるが、塩分の過剰摂取が大きな問題となっており、各国で摂取量削減の取組みが進みつつある。味の感じる仕組みや栄養との関連を導入部として紹介し、食品科学として、分子生物学の視点から味覚の認知システムと味覚の強化、マスキング及び転換の手法について紹介した。
3.受講者の声